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- PatiPati (Ver 4.4) -




大声で叫びたい、誰にも知られたくない  


俺を見つめる深い蒼。  何もかも見透かされているに違いなくて、時折恐れを抱く。
 愛していると叫んで誰もに教えたい、彼女との絆を。
 こんなにも深く愛し合い求めあっているのだと。
 けれど、誰にも知られたくはない。知られた時破滅を迎えるだろう。
 表面上は二人の間には、何もない振りを装って。
 彼女を愛する男ではなく忠実に仕える執事というだけだという
 ことを他者に見せつけなくなくてはならない。
 今が続くためには、  ギリギリのスリルが快感だ。


 テーブルの上に散った金髪が、美しく淫らだった。
 キャンドルの下で明りに映える、その美貌。
 儚さと強さを湛えた彼女は、ジュリア・アダムス。
 初めて出会った日に惹かれ、焦がれあっという間に夢中になった。
 孤独な横顔と気高き眼差し、魅惑的な体。
 欲しいと希い、手に入れた瞬間堕ちていくことを自覚した。
「……イアン、何か話して」
「何を」
「あなたの話なら何でも。寝物語でも構わなくてよ」
 細い指が、シャツのボタンを外す。されるがままになりながら、彼女を攻める。
 乱した襟元から除く、首筋の白さにひきつけられた。
「っ……」
 思わず、花を咲かすためにきつく口づける。
 こんなものシャワーで流せばすぐに消えてしまう。
それを知ってから、どんどん大胆になっていった。
 それでも、微かに唇は震えた。今更躊躇いも何もないというのに。
 繰り返すキス。
 脳内にイメージする景色はぼんやりと頼りなく、現実より美しい。
 引力に抗いきれない腕が、無造作に投げ出されたのを見て、手のひらを繋ぎ合わせた。
 かすかな音をたてて肌をたどる、唇。指の腹で撫でる柔らかな曲線。
 ドレスが皺くちゃに乱れる。裾を割って、素足を指でたどった。
「意地悪だわ。中から鍵までかけて計画的なのね。
 この部屋は音も声も漏れないもの」
 吐息混じりの声音で抗われても、止まれない。むしろそそられるだけ。
「ひと時でも離れていたくないくらいなのに……あなたはそうではないのですか? 」
 一瞬、苦しげに眉をしかめた彼女が、頭(かぶり)を振った。
「まさか。私だってあなたと離れてしまうのは嫌よ。
 ……たとえ体が繋がっているのはつかの間でも心はひとつに繋がっているんだもの」
「可愛い殺し文句だ。愛していますよジュリア」
「……っ……愛してるわ」
 イアンと名前を呼ぶ前に、唇を塞いだ。
 絶え間なく紡がれる甘い吐息に狂わせられる。
 ひとつになれれば、悦び以外に何もなくて、明日もこれで生きていける。
 愛しい人に温もりを与えられるこの身があるのだから、十分幸せだ。
 目眩と陶酔の中で、強く感じた。





 恋十題by乙女の裏路地