後ろから抱きしめる

 
                  


「な・・・何を」
思わずうろたえてしまう。
彼の予測できない行動に、らしくないのに心臓が高く鳴った。
「何するのよ」
自分でも声が上擦っているのがわかる。
だって、私の背中を抱いているのは・・・・・。
「お前でも狼狽することがあるんだな」
当の本人からは、そんな言葉が帰ってくる。
無性に腹が立つ。
お前でもって何よ、それ!
「もしかして嫌がらせのつもり?」
そうに違いない。
彼がそんかなことをするはずはないのだ。
彼が・・・。
「嫌がらせだ」
「って言ったらどうする?」
うっわ、性格悪っ!一旦言葉切ったわね。
「お生憎様。こんなの嫌がらせの内に入んないわよ」
寧ろ、嫌ではない。嬉しい気がする。
だから、こんなに心臓が跳ねるのだ。
「別に嫌がらせのつもりはない」
「どういうこと?」
それに答える声はない。
卑怯よ。こっちからじゃ顔は見えないんだから。
私が身を捩っても腕の力は緩むどころかますます強く体を抱きしめる。
「・・・・・・・・嫌がらせじゃなかったら何なのよ」
呟きに答える声はない。
それとも抱擁で答えているとでもいうのだろうか?



華奢な体はするりと腕の中に収まった。
驚いたように身を竦めたのが不思議だ。
跳ね除けられるのではなく、恥ずかしそうに。
こいつはこんな女だったか?
いや、そうじゃない。
俺がこういう部分を知らなかっただけだ。
「いい加減、離しなさいよ」
怒っているわけではなさそうな声に安堵する。
「嫌だと言ったら?」
「は!?」
ますます腕に力を込めた。
じたばたと暴れだす体を押さえつける。
「いい度胸ね」
「嫌なら腕振り解けば?」
「あんたが離しなさい」
「嫌だね」
「鎖縛!」
彼女は、するりと腕をすり抜けた。
こちらの顔を睨みつけてくる。
真っ赤な顔におかしくなる。
「その性格どうにかしなさいよ。って無理か。
魔性って生まれつき性格悪いものね」
「ああ」
笑ってやれば、狐のように目を吊り上げた。
「何でこんなことしたのか説明しなさい」
「さあな。俺にも分からないんだ。何故かこうしてお前を」
続きの言葉は行動に代えた。
今度は正面から抱きしめる。
「あんたにこんなことされても全然嬉しくないんだけど?」
「そうか」
答えは分からなかった。
ただ、そうしたかっただけだ。
背中を抱いて砂色の髪を梳く。
急に腕の中の体が、大人しくなった。
さっきまでの威勢のよさは何処へ行ったのだろう。
「サティン」
耳元で存在の名を呼ぶと、
「・・・・・・反則よ」
そんな言葉が、聞こえた。



ふと抱きしめたいと思った。
意味なんてない。
ただこうしていることが嫌でないことは確かだった。



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ぎゃふ!
よくわかんなくてすみません。
仄かな感じを目指したのですが(爆)
サ鎖ではなくこれは鎖サです。
この二人好きなんですよね。
その想いだけどうか分かってくださいー。
読んで下さりありがとうございましたvv
BGMは何故かガンダムSEEDのコンプリートベスト(笑)

2003.11.15龍咲麻弥