焦燥に煽られていた。 ありえるはずもないと何度も胸の中で唱えても、 あいつの面影が脳裏から消えない。 掻き消そうとすればするほど、どんどんあいつで埋め尽くされていくようで。 あの女狐を俺が? 言いたいことを言いまくる口やかましい女だぞ? 麻薬のように体に浸透してゆく。 恐ろしい浸透力だった。 言いたいことはずけずけと言うが、彼女はこちらの言葉をちゃんと聞いてくれて認めてくれるのだ。 ただ一度も、柘榴の妖主の偽物として扱うことはなかった。 相容れないと互いに感じ合いながらも、彼女は歩み寄る姿勢を崩さなかった。 俺は享受したつもりはなかったが、抗う術も持たなかった。 再び居場所を与えてくれたのは、彼女ーサティンーだと気づかされたから。 姉貴分の衣於留と離れてから、俺はまともに人と触れ合ってなかった。 いがみ合うことさえ、嫌じゃないと感じている今、 俺は彼女への想いに追い詰められているのかもしれない。 否定しても否定しても説得力がないほどに、 心はサティンを追い求めていた。 最早、逃げられないだろう。 側に居ると苦しくてしょうがなく、呼びかけに答えることを止めた。 きっと相当怒っているに違いない。 最近、鎖縛の様子がおかしい。 必要以上に避けている。 呼んでも中々出てこないなんて、普通のことだが それでも時間が経てば出てくるのだ。 腕を組んで、宙に浮いた姿勢で不機嫌なのを隠そうともしないけど。 どうして呼んでも出てこないのよ! 私の護り手の役目を放棄する気じゃないでしょうね。 できるわけはないでしょ? ぎりぎりと唇を噛んだ。 怒りではなく、どこか寂しさを感じている自分に驚く。 そりゃ腹立たしいけど。 姿を見せないから、気になってしまうのよ。 心にぽっかりと穴が開いた感じだ。 喧嘩相手がいないと、どうも退屈だ。 落ち着かない気分でベッドに寝転がる。 さっさと出てきなさいよ・・・・・・。 脳裏に描き出されるむかっ腹が立つくらい整った容貌。 掻き消そうと枕を殴る。 いつだったか、自分を偽物だと卑下し続ける彼に、本物だと言ってやった。 紛れもなく本物なのに、暗い過去から抜け出せずにいたんだもの。 暗い顔でうじうじされるとこっちまで気が滅入るし。 架因を殺したことはずっと許すことは出来ないだろうが、 ねじれて歪んだ根性は直してもらわなければ困ると感じた。 最近はやっと、前より分かり合えてるって思ってたのに、姿を隠すなんて。 なんなのよ、もう。 鎖縛、どこにいるのよ! こんな思いをさせて、絶対許さないんだから! 今度会ったらどうしてくれよう。 ************************ がは。鎖サ熱が高まっておりまして(爆) 今回は互いへの想いを認められず苦しむ二人ということで。 追い詰められてます、彼と彼女(爆) ど、どうだったでしょうか? 私の中で鎖サフィーバーはまだまだ続くでしょう。 読んで下さりありがとうございました。 2004.2.29龍咲麻弥 |