シーツにくるまる

 
                  


「リーヴィー、体の具合でも悪いのですか?」
彩糸の声さえ今は鬱陶しい。
部屋から出てこない自分を彩糸は心配している。
心配かけたくないのだけど、何もやる気が出なかった。
頭の中を支配するのはやたら綺麗な顔をした人間育ちの魔性。
逃亡中のラエスリールの後を追っている為か、
最近、めっきり姿を見せなくなった。
これは不貞寝だ。分かっているが、なんでこんなに寂しいのか分からない。
シーツにくるまって唇を噛む。
切れるほどに噛み締めた。
「・・・・・・・っ」
瞳が熱い。指で確かめれば雫が滴っている。
人間臭かったのにいつの間にか魔性みたいになっていったあいつ。
妖主同士の間に生まれた純血種だから、普段の態度からは
想像できないくらいの 強大な力を秘めていて。
人間育ちといってもやはり魔性だから残酷になれるかもしれない。
ラスを想うほど強く彼の心の中にはいない。
所詮ちっぽけな存在に過ぎないんだわ。
こんなことを考えている自分が情けなくなった。
乱暴に髪を掻き毟る。苛々を行動に置き換えるように
彩糸が見ていたら咎められるだろう。
膝を抱えてシーツにくるまったままぼんやりと考える。
どんな姿でも人間でも魔性でも、彼は邪羅でありザハトなのだと。
人間だろうと魔性だろうと関係がない。
彼は彼だ。

ベッドの隅にある竪琴に視線をやった。
シーツを抜け出て、竪琴を抱えると床に座り込んだ。
ポロリポロリ音をかき鳴らし奏でる。
無駄に魔性を呼んでしまう行為だと充分知りつつも。
・・・・・・あいつに届くように。
想いを全部注ぎ込んで。

「お前、なにやってるんだよ」
不可解そうな声音が耳に届く。
竪琴を引いて下級魔性を招くようなことしたことに、呆れている。
「遅い・・・・」
「は?」
鼻の頭がツンとする。
じわりと込み上げるものを誤魔化そうと睨みつけた。
「俺、お前に怒られるようなことしたっけ・・・?
八つ当たりなんてガキくさいこと止めろよなー」
「なんですって!失礼なこと言わないでちょうだい!」
想像通りの物言いに安堵して、いつもと同じように言い返す。
「やっぱ威勢いいお前の声聞かないと駄目だな」
罵りあいは始まらなかった。
邪羅はふと柔らかく微笑んだのだ。
ふいに腕が伸びてきて髪を梳いた。
「何」
ビクリと体が震えた。
予想のつかない行動を取られ固まってしまいそうだ。
「折角の綺麗な髪なのに・・・乱れてるじゃないか」
そういって頭を撫で続ける邪羅。
何にも言えなくなった。
振り払えない。
胸の動悸は激しくなる一方だ。
「・・・・・・・お前を心配するあまり彩糸がドアに聞き耳立てたりしてな」
唐突に邪羅から漏れた一言は強烈だった。
「いくら彩糸でもそんなことしないわよ・・・多分」
案外当たってそうで怖い。
「別に聞かれたら不味いこと話してるわけじゃないしいいけど」
あんまりいい気分ではなかった。いくら相手が彩糸であろうと。



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邪リ。イチオシカップリングなんです(何)
うわー変だよ何これー!(><)
修行しよう。うん。
ほのかとほのぼの目指してv
読んで下さりありがとうございました。

2004.03.24龍咲麻弥