この胸に宿るぬくもりは嘘じゃない
激しく、切なく苛めば、ますます彼女が近付く気がした。
夜を越えて、朝になっても気が狂うくらいの熱情の中で
求めあっていた。時折零れる涙を見るのが苦しかった。
いつかは、失ってしまう。恐れを抱きながら、
それでも抱いてしまう。
欲望だけ。余計なしがらみなんていらないのだ。
言い聞かせているのかもしれなかった。
腕の中に閉じ込めた彼女があまりにも儚げで、
見つめる瞳の強い光に圧倒されるばかりで、追いつめられていく。
辛くないのかと問う権利はない。
欲するままに求めているだけの俺が残酷な台詞を口にはできるわけがない。
無意識に体を掻き抱く。
馬鹿な事をと思いながら、彼女が残した温もりを思い出していた。
この心に灯った炎は、決して嘘ではない。
答えを出せるその日まで、共に往こう。
会ったらまた甘えてしまうから、ほんの少し距離を置いてみたが、
彼女は俺に会いたいと思ってくれているだろうか。
結局、自分の首を絞めるのだ。
会う日を伸ばせばその分、激しく想いをぶつけてしまうのに。
恋人同士になれたら、彼女は素の微笑みを見せてくれるのだろうか。
いや今のままで十分だ。
俺の腕の中しか知らない事実は所有欲を満たしてくれる。
身勝手な自分に心底呆れてしまうが。
今までの人生で俺の心をこんなにも掻き乱したのは彼女だけだ。
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恋十題by乙女の裏路地