sugary trap 1
電話越しに聞こえる低い声。
いつもと同じのようで違う。
吐息がかって甘さが増していた。
「絢……自分でしてみて」
「っ……できません」
「どうして? 俺の前ではしてくれたじゃない」
そう、目の前でならしたし、その後で我慢が利かなくなり自らしてしまった。
あの時は本能に抗えなくて、淫らな自分をさらけ出してしまったけど、
彼の側でではなく自分の部屋で、電話越しに自慰をする姿を彼に伝えるだなんて。
「……高遠さんもするのならいいです」
「先に絢が、してる様子を教えてくれなきゃ、やる気起きないよ」
いつも、この人はずるい。
さっきから、電話から聞こえる甘い声に私は体中が鳴いているのに。
本当は抗えないってこと分かっててやってるに決まってる。
じわり、うるむ瞳に力を込める。
もう、落ちるしかない。
「約束ですよ……」
するり、着ていた服を脱ぎ下着姿になった。
ごくんと息を飲む。
左手を自分の下肢に、右手はブラジャーの上からふくらみを包んだ。
「んん……っ」
焦燥に駆られ、両手を動かすけれど、もどかしいほどの快感しかない。
それでも、下肢は潤みを帯び始め、
下着の上からでもわかるほど、頂きが尖ってきた。
部屋でひとりきり、彼氏に電話で自分の淫らな声を
伝えている状況に、罪悪感を感じるより、次第に興奮してきていた。
ブラジャーを外し、指先をより大胆に肌へ這わせる。
頂きを摘みふくらみを揉むと、水音が、
はっきりと分かるほどに聞こえてきて目をつむった。
「ああっ……ん」
とろりとした雫を指で蕾に撫でつける。
頂きを擦っていると、びりびりとした感覚が全身を伝い理性があやふやになってくる。
枕の上に置いた携帯からは、少し乱れた吐息が聞こえてきたのをとらえた。
(高遠さんも興奮してくれているの? )
「高遠さん……っ……あ」
指で蕾を押しつぶした途端に、がくんと背中が傾いだ。
やっぱり足りない。
私は、あなたに抱かれたい。
震える左手で思わず受話器を握った。
横たわった私の耳に切なげな声が届く。
「絢……っ」
まるで達した時のような声に、ぽろりと、涙がこぼれる。
「最高だったよ」
「馬鹿……」
かすれ気味の声で言われ、悪態をつく。
高遠さんも見せてくれたってことでしょう。
けだるさに襲われてそのまま瞳を閉じた。
彼になら何を命じられてもいいとも思う。
そんなにひどいことは要求されないだろうから。
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